5.マン防50

【マン防50】は、マンション防災の50の提言として以前にtwitterに掲載しました。そのすべてをここに掲載します。

1.大地震でも建物が倒壊する可能性は低い

◇提案1:耐震診断 ◆数年前の耐震偽装事件発生時に大きな反響を呼びました。構造計算書が偽装されておらずにその通りに施工されていれば、大地震でも倒壊の可能性は非常に低いといわれています。

◇提案2:マンションは倒壊しないとして防災計画を進めましょう。◆耐震診断で問題がなければ、防災計画を推進する方は勇気をもって建物は崩れないという前提で進みましょう。

◇提案3:マンションの建物は倒壊しないが建物内の設備破損があるとした防災計画を考えましょう。◆給水管・雑排水管の亀裂、外壁の落下、非常用外階段の破損、屋上給水塔の損壊、エレベータ損壊などを想定した対策が必要です。

2.高層階の揺れは地上に比べ数倍の揺れになる

◇提案4:家具類の転倒防止とTVなどのインテリアの固定を徹底しましょう。◆押し潰されたり物が飛んできて怪我をしないためにしますが、絶対安全はありません。転倒防止と固定は逃げる時間を稼ぐ目的もあります。1箇所より2箇所、2箇所より3箇所です。

◇提案5:窓や家具のガラスには飛散防止フィルムを貼りましょう ◆マンションの特に高層階ではガラスが割れて飛散して、怪我、行動範囲の制限、休息場所不足、片付けの手間などの原因になります。

◇提案6:扉はロック、キャスターは固定 ◆家具や冷蔵庫などの扉は施錠部品を取り付けてロックしておきましょう。キャスター付き家具も普段はロックして地震時に走り回らないように固定しましょう。

◇提案7:照明器具は固定と飛散防止◆天井から吊り下げ照明は固定式へ変更。固定式でない場合、吊り下げ照明やスタンド照明の蛍光灯破片の飛散防止のための蛍光灯カバーの使用。スタンド型照明は飛びださないよう固定。

3.火事、閉じ込め、怪我人が出たら同じマンションの住民で助け合える

◇提案8:集合場所はマンション。 ◆大地震後の集合場所を家族で決めておくことが必要です。マンション居住者は自宅にしましょう。自宅が住めない状態でも毎時00分にマンション前に集合とします。避難所では人は探せません。

◇提案9:安否確認は「171」◆大地震後は一般の電話が不通になります。家族や親戚・友人との安否確認には「災害用伝言ダイヤル171」、携帯電話は「災害用伝言板」。毎月1日にテストができますので使い方を覚えておきましょう。

◇提案10:緊急ホイッスルの携帯 ◆室内・室外を問わずどこかで何かの下敷きになったり、怪我をして動けなくなったりすることがあります。緊急ホイッスルを吹いて救助を求めましょう。氏名・住所・血液型などを書いたカードを収容できるタイプもあります。

◇提案11:出火のときは初期消火 ◆台所で火事が発生したらあわてずに初期消火。天井まで火が上がってしまったら迷わずに退去。マンションの室内は火がまわりやすいので逃げ遅れないように注意しましょう。

◇提案12:協力して救出・救助 ◆どこかで助けを求める声が聞こえたり、怪我人や動けない人を発見した場合にみんなで協力して救出・救助しましょう。バール・ジャッキ・担架・救急医療品を管理組合で備えておくことが必要です。

◇提案13:EV閉じ込めの救出 ◆EV(エレベータ)に人が閉じ込められ、保守要員の到着を待っていたら人命に関わるような場合、自分達でも救出できる方法があります。EVメーカの緊急救助訓練を受けてみませんか。

4.被災時は自宅マンションで避難生活します

提案14:飲料水の備蓄は必須 管理組合に期待をしてはいけません。自分のことは自分で備えます。備蓄で最も大切なものは飲料水です。飲料水は1日1人3L3日分を人数分。水道水をペットボトルに入れても3日は飲めます。

提案15:生活用水も大量に備蓄を ◆生活用水(トイレを除く)は、1日1人153日分を人数分。バスタブの水は約200L≒13人日分。水道水をペットボトルに入れておけば3日までは飲料水、それ以後は生活水として使えます。

◇提案16:食糧備蓄は普段の生活の中で ◆普段の食卓に長期保存食品を加えておきましょう。缶詰、レトルト食品、乾麺、スパゲッティ、乾物類や乾燥野菜など。米があれば出来合いご飯やアルファ米は少量で良いです。保存食の費用負担を軽減しましょう。

◇提案17:簡易トイレは必須の備蓄品 ◆マンションは倒壊しなくても水を流せなくなります。その時は簡易トイレを利用します。1日1人3個7日分を人数分(大便用で1個、小便用で2個)。消臭凝固剤だけの商品も出ていますのでゴミ袋を使うこともできます。

◇ 提案18:意外に役立つもの ◆業務用の厚手のゴミ袋、大きなポリタンク、ナイフ。厚手のゴミ袋は、トイレにも防寒着にもなります。大きなポリタンクと厚手のごみ袋は水が不足した時給水施設から運ぶときにも使えます。ナイフは普段から持ち歩いて使います。

提案19:水・食糧の不足はご近所から 水や食糧が不足したらご近所から分けてもらうのがベストです。マンションでも日頃からご近所とのお付き合いが大切です。避難所では大行列となり配給はあてになりません。

提案20:カセットコンロで最初に生ものを加熱 カセットコンロとカセットボンベを準備しておき、これだけで煮炊きします。地震で停電になったら、最初に冷蔵庫の中の生ものをカセットコンロで火を通して長持ちさせます。

◇ 提案21:被災時クッキングでは素手で触らない ◆水が制限されているので、直接手で食材にさわらない、まな板に直接食材を置かない、包丁よりハサミを使うなどして手を洗わなくてもいいようにします。

提案22:被災時クッキング時の消毒 手が頻繁に洗えませんので、大腸菌・O157対策には塩素系の除菌剤を、インフルエンザ対策にはアルコール系の消毒・除菌剤を備蓄しておきます。

◇ 提案23:意外に役立つ電気製品 ◆電気は早く復旧する可能性が高いので、電気ポット、ホットプレート、炊飯器、オーブンレンジは比較的早く利用できことができるようです。マンション自宅で避難生活を送るためには重宝します。

提案24:情報の取得はFMラジオで 地元FMラジオ局が一番身近な情報を流してくれるはずです。停電でも使えるFMラジオを準備しておきます。行政の情報は避難所に掲示されるのをマンション住民が交替で見に行きましょう。

5.被災生活においてもマンション独自の生活ルールが必要です。

◇ 提案25:管理組合では水・食糧の備蓄はしない ◆備蓄は住民がそれぞれ自分達ですることを住民に伝えておきましょう。管理組合での食糧・水の備蓄は、現物管理、期限切れ管理と再購入のコスト、格納場所確保、絶対量不足など問題があります。

提案26:管理組合では救命・救助の道具を備蓄 人命救助・救出に必要なものは管理組合で備えましょう。バール、ジャッキ、ハンマー、のこぎり、スコップ、台車、ハンドマイク、担架、救急医療品、簡易トイレなど。

提案27:ゴミは自宅保管 ◆家具転倒で壊れた食器等で大量のゴミが発生します。また、被災生活では紙コップ・紙皿など使い捨て食器のゴミが多くなります。ゴミ回収車が来るまでは自宅保管にします。

提案28:トイレゴミも自宅保管 ◆水が流せなくなると簡易トイレを使用しますが、このトイレゴミもゴミ回収車が来るまでは自宅保管にしましょう。ゴミ置き場に捨てると、溢れたゴミを管理する仕事が増えて大変です。

◇ 提案29:トイレに水を流さないルール ◆①水道が止まった時。②簡易トイレを配布した時。管理組合で簡易トイレを備蓄し、雑排水管損傷の疑いある場合は簡易トイレを配布。その時をトイレに水を流さない合図とします。勿論その時は台所やお風呂の水も流しません。

提案30:食糧配分のルール 自分の食糧は自分で備えることが原則ですが、不足することもあります。ご近所同士で不足のときは分けあうことを話し合っておきましょう。また、管理人や来館者が帰宅できない場合のために備えておくことも必要です。

6.マンション住民の非常時の持ち出し品

◇提案31:被災現地を歩く時の所持品し ◆ガレキの街を歩くため、底の厚い靴、防塵マスク、携帯カッパ、ヘルメット、厚手の手袋、緊急ホイッスル、懐中電灯、ラジオ、携帯電話、10円玉を所持しましょう。移動にはミニバイクが便利。

◇ 提案32:避難所へ移る時の持ち出し用品 ◆どうしてもマンションで生活できない場合は避難所に移ります。被災状況や避難所の状態、また室内の散乱状態を見ながらその時に持ち出すものを決めても遅くはありません。何度でも往復して運び込みましょう。

◇ 提案33:外出や避難所へ移るときの二次災害防止 ◆家を出る時は二次災害防止対策のため、電気ブレーカ遮断。電気器具類の電源オフとコンセントを抜く。また、震災後泥棒が予想されることから貴重品は携帯する。

提案34:普段から持ち歩く防災用品 平常時でも電車の中、建物やエレベータの中に取り残された場合を想定して、簡易トイレ、ミニ懐中電灯、緊急ホイッスル、マスク、薄手袋、10円玉、家族写真を所持しましょう。

◇提案35:被災生活が長期化する場合は現金を マンションまたは避難所での被災生活が長引いたときに必要なものは、現金、水、食糧(阪神淡路大震災アンケートより)。何よりも現金が大事という結果が出ています。

提案36:家族写真の携帯 家族と離れた場合に捜索するなど安否確認のために、平常時から家族全員の写っている写真を常に所持しておきましょう。裏に撮影年月日、住所、電話番号、全員の氏名を記載しておきます。

7.マンションは住民以外の人が侵入しやすい

提案37:挨拶も防災です 震災後泥棒の対策として、防災訓練、クリスマスなどのイベントを実施したり、普段からの挨拶を通して顔見知りをたくさん作っておきましょう。不審者発見時の通報設備・通報連絡網も必要です。

提案38:自衛見廻り隊 震災後の泥棒対策として、マンション内に自衛見廻り隊を作ります。24時間交代で見廻るようにしましょう。人の弱みにつけ込む震災後泥棒は許せませんが、自衛手段で防ぐしかありません。

8.共有財産である建物の減災と復旧は重要

◇提案39:計画的な建物修繕 ◆長期修繕計画と無理のない修繕積立金の積立計画は建物保全に欠かせません。建物保全をきちんとしておけば地震での破損も最小限にくい止めることができます。

◇ 提案40:適正な修繕積立金 ◆修繕積立金について見直しましょう。今後少なくとも20年間の修繕積立金総額と長期修繕計画に基づいた修繕費用総額のバランスを確認します。マン管センターで確認方法を示しています。

◇ 提案41:区分所有者リストの確保 ◆緊急時連絡先を兼ねた区分所有者リストを随時更新します。誰が閲覧できるかなど運用細則も設けます。原則、緊急時にしか使用しません。地震で建物が崩壊しマンション建て替えを検討する場合には使いますが。

  提案42:地震保険 ◆地震発生時に怖いのは火災です。地震火災でマンション室内が全焼すると火災保険では保障されないため地震保険加入をお勧めします。火災保険とは別建ての地震専用の少額短期保険も登場しています。

9.マンションでも災害対策本部を設けて災害初動を乗り切りましょう

  提案43:災害対策本部の設置 ◆被災時にマンション災害対策本部を開設する準備をしましょう。マンション住民の共助によって被災生活を乗り切る基盤とします。救出、設備、防犯、広報、保健、衛生などの班で構成します。

  提案44:災害本部設置に必要な備品 ◆マンション災害本部は、集会室等に設置します。模造紙、油性マジック、手回しラジオ、布製ガムテープ、ナイフ尉、色違いの腕章、画版、救急医療品等を備蓄しておきましょう。

◇ 提案45:災害対策本部のメンバー ◆災害対策本部は、理事長らの役員が担うものではなく、被災時にマンションにいる人達で運営します。そのためには誰でもがリーダーとなって運営できるマニュアルの作成が必要です。

◇ 提案46:市民救命士の養成 ◆赤十字救急法救急員養成講習や消防本部による救命講習に参加し、マンション内に市民救命士を養成しましょう。被災時に軽度の傷病者は自分達で手当てする体制ができたらお互い安心です。

  提案47:災害対応自動販売機の設置 ◆マンション内に災害対応の自動販売機設置を検討してはいかがでしょうか。被災時に停電でも中の飲料水を取り出すことができます。災害対応自販機は飲料水の備蓄倉庫になるわけです。

◇提案48:AEDの設置 ◆マンションにもAEDを設置しましょう。高額なので災害対応の自販機を設置する時にAEDをつけてもらいましょう。条件がありますが検討の価値ありです。

10.地域との交流・調和にはまず近隣のマンション同士の連帯、そこから地域貢献を

◇提案49:近隣マンションとの交流 ◆近くのマンションとの交流を図り、災害発生時の相互協力を要請しましょう。地域との交流が少ないといわれるマンションですが、声をかければ交流はできやすいです。マンション同士の交流から地域との交流へ。

◇ 提案50:災害支援場所として ◆マンションの集会室や敷地内スペースを災害支援施設の場所に提供しましょう。被災時に地域の医師が集まる災害救護所に、またボランティアセンターや救援物資の受け入れ・格納施設としての場所に。マンションは地域貢献も重要です。